先日、TBSテレビの金曜ドラマ『病室で念仏を唱えないでください』を見ていたら、こんなシーンがありました。
伊藤英明さん演じる、僧侶で救命救急医という異色のキャリアの主人公・松本照円(しょうえん)と、松本が父親のように慕っている、泉谷しげるさん演じる宮寺憲次が、宮寺のがん治療の方針について、治験薬を試すかどうか、病院内のカフェで話しているときのこと。
宮寺のおじさんが「白か黒かで迷う」と呟きます。
そのときカフェではドミニカ共和国フェアと題し、白と黒のドミニカカレーを売っていました。お店には「白か黒どっちか決めろ!!」と書いてあります。
松本はカレーを食べることで悩んでいるのかと思い、「お腹すいてるの?」と宮寺のおじさんに聞きますが、宮寺のおじさんは「治験薬を試す」と答えます。
そして「どの病院、どの治療法、どの薬にするか…病気ってのは生きるか死ぬか、選択の連続だね」と漏らします。治験薬を試すと決めたのは、たとえ死んだとしても誰かの役に立つと考え、それは「生か死、そのどちらでもない」と思ったからだと続けます。
その時のおじさんの心を表すように松本が口にしたのが、「両忘(りょうぼう)」という禅の言葉。両方忘れる、つまり「二者択一から自由になること」。「生死や苦楽、白黒、善悪、好き嫌いなど、相対的な対立を忘れ、二元的な考え方から抜け出すこと」という意味があるそう。
「人間、白黒つけられないことばっかりだからね」と言った宮寺のおじさんは、やっぱりカレーを食べると言いますが、白と黒、どちらかをすぐに選べなかった松本は、最終的に「カレーを食べない」選択をします(=両忘)。
ドラマをご覧になった方はご存知だと思いますが、このシーンの前には実は、ムロツヨシさん演じる心臓血管外科医の濱田達哉と松本が「人の命と不正、どちらが大事か?」「お前が正義で俺が悪か」など、言い争うシーンがあります。
白黒、グレー。
二者択一と、両忘。
個人的には、基本グレーの領域がないので、逆にグレーな状態の方が辛いのですが、それでも、二者択一ができないこともありますし、二者択一の限定的な考えにとらわれてしまうと、どちらも選べない場合、とても苦しくなってしまいます。
ちょっとシンクロを感じてしまったのは、ちょうどその2日後に放送された読売テレビ・日本テレビ系の日曜ドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』で、横浜流星くん演じる主人公の森島直輝が、ふたりの女性、どちらの命を助けるか選択を迫られるシーンです。
いつもグレーな事件の善悪を白黒ハッキリさせていた直輝が、命を秤にかけられ、二者択一しづらい状況に立たされます。
そのシーンを見たときに「両忘」を思い出しました(この場面で両忘をしてしまうと大変なことになってしまうのですが…)。
今日、月は天秤座に。
天秤の絵は、白と黒、別のものをそれぞれ秤に乗せ、左右のバランスをとることで均衡を保っています。
物事を白黒はっきりさせたほうがわかりやすいけれど、グレーを好む人もこの世の中には多くいらっしゃいますし、白黒させないほうが幸せなこともたくさんあります。
私には松本のように、「白カレーと黒カレー、どちらも選べないからドミニカカレーは食べない」という選択はまだできそうにありませんが(死ぬほど迷ったら両方食べるか、2回食べることを選択しそう)、ドラマから、逃げとはまた別に「結論を出さない方法=両忘」という選択もあることを学びました。
使いどころを間違えると怒られそうですが、困ったときは第3の選択肢として「両忘」を。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
可能であれば、個人的には4つ目の選択肢として「両方選ぶ」もありかと思います(笑)。