ここ数日、「『地球が静止する日』を思い出す」という言葉を何度か見聞きしたので観てみました。キアヌ・リーブス主演の映画『地球が静止する日』。
『地球が静止する日』は2008年のSF映画で、原題は『The Day the Earth Stood Still』。小惑星とともに現れた生命体(宇宙人)に人類が滅亡の危機にさらされる、というストーリーで、1951年に公開された映画『地球の静止する日』のリメイク作品です。
エンタメ作品としては、うーん…という感じでしたが、『地球の静止する日』で何度となく発信されているメッセージが示唆することについては、これは今の私たちに向けられたものと捉えることもできるな、ということは感じました。
ストーリーは考慮せず、映画を通して発信されているメッセージだけをまとめると、こういうことです。
キアヌ・リーブス演じる地球外生命体のクラトゥは、地球を助けるために地球にやってきます。
「地球を救いに来た」と言うクラトゥに、この物語のヒロインである地球外生物学者ヘレン・ベンソン博士(ジェニファー・コネリー)は、最初、彼が「地球=人間を救いに来た」と言っているのだと勘違いしてしまいます。
でも、クラトゥが救いにきたのは地球であって、人類ではありません。「この星は死にかけている」「人類が殺そうとしている」というクラトゥの言葉に、彼が今まで言っていた言葉の真意が「人類から地球を救いに来た」ということだったと知り、愕然とするヘレン。
そんな彼女にクラトゥは続けます。1つの種のためにこの星を犠牲にできないこと。人類がいなくなれば、地球は生き延びることができること。「複雑な生物が生息できる星はわずかしかいない。この星を守らなくては」と。
「私たちは変われる、改善できるわ」と食い下がるヘレンに、「変わるのを待ってきた。だがもう限界だ。傷ついた地球を再生させる」とクラトゥ。
皮肉だな、と思うのは、人間が「地球=私たちの星」と思っていることが折に触れ否定され、地球は人間のものであるという思い上がりのような思考が透けて見え、滑稽に見えてしまうところです。人間からしたら他の惑星の生命体は自分たちの住む地球の侵略者、なわけですが、あまりそうは見えない、人間の身勝手さがわりと浮き彫りになっている演出がとっても皮肉…。
そして場面は変わり、今度はヘレンの共同研究者であり、生物の利他行動の研究でノーベル賞を受賞した、ノーベル学者のカール・T・バーンハート教授とクラトゥの対話が始まります(ここでもさらりと「生物の利他行動の研究」というワードが出てくるのですが、人類が地球を傷つけている、という前のくだりを考えると、ここにも何か皮肉のようなものを感じます…)。
このシーンは言葉での会話ではなく、数式での対話でスタートするのが面白いです。でも、人類が地球にとって有害だと言っているクラトゥに対し、「きみたちの技術で問題を解決できるはずだ」というバーンハート教授の第一声。(個人的にこの発言にはびっくり)。
そんな教授にクラトゥは「技術の問題ではない。君たちが問題だ。変わろうとしない」と、あくまで冷静な返答。
すると教授、「手を貸してくれ」と言葉を変えます。
「本性は変えられない。地球に対して乱暴だ」とクラトゥ。
けれども教授も引きません。「だがどんな文明もいずれ危機的局面を迎える。ほとんどが滅びる。でも君たちは生き延びた」とたたみかけます。そして「太陽を失いかけて進化を余儀なくされた」と答えたクラトゥに、「絶滅の危機だと知ってから進化したんだな」と問いかけます。
クラトゥが「そうだ」と認めると、教授はうまいことを言って彼を言いくるめようとします。「私たちは今知った。確かに絶滅の危機だろう。だが危機に瀕して初めて人は変わろうとする。窮地に立って初めて進化する。その好機を奪わないでくれ。答えに近づいているんだ」と。
コロナ禍の最中、この映画を思い出した、という方々は、きっと地球環境を破壊し続けてきた人間が地球にとって有害だから招いた状況と仮定して、この映画と現状を重ねたのだと思います。
映画での宇宙人襲撃も現実のコロナも、人類から見れば降って湧いた災難のようですが、視点を地球に変えてみると、人類がずいぶん勝手なことをしてきたそのツケがまわってきた、という見方をすることができます。
私は地球と人類の関係を思うとき、がん細胞の例えを思い出します。
地球にとっては人類こそががん細胞で、ウイルスはがんに対抗するための免疫力であるということ。
作中の、「変わるのを待ってきた。だがもう限界だ」というクラトゥの言葉が、今の人類への警鐘のようで刺さります。
バーンハート教授の「危機に瀕して初めて人は変わろうとする。窮地に立って初めて進化する」という言葉はたしかにその通り、かもしれません。
でも、最悪な事態に陥ってから慌てて進化するよりも、できることなら最悪な事態に陥る前に、耐えられないほどの痛みを伴う前に、傷がまだ浅いうちに、私は変化・進化したいと思います。
1人の力にどの程度の威力や影響力があるのかはわからないけれど、それでも。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
映画とは違い、猶予はもうないと思います。だから、最初は微力でも次第に大きな力となる「バタフライ効果」となることを願って。
『地球が静止する日』
公式サイト:http://movies.foxjapan.com/chikyu/
※Amazon Prime Videoでの視聴はコチラ。