ミュージカルが好きなので、ミュージカル映画も大好きです。なので『キャッツ』の映画版は観てみたいと思っていました。友人に「『キャッツ』のミュージカルは本当にすごい!すごく良かった!」と聞いていましたし、私自身はまだ観たことがなかったので余計に。
けれど、映画を観る前に様々な酷評記事を見てしまい…。他にも観たい映画がいくつかあったので、「そんなにひどいなら観るのはやめる?」と迷ってしまったのも事実。なぜなら、ミュージカルは好きだけど『キャッツ』という作品自体に惹かれるものが今までなかった、つまりそこまで関心もなかったから…。
酷評記事(?)はこちら。
批判の集中砲火を浴びてしまった『キャッツ』。ミュージカル映画とは、どう向き合うべきか
映画化された『キャッツ』は、ネット民の予想通りに“微妙な作品”だった:映画レヴュー
で、結果的に、上映時間の関係などで早々に映画版『キャッツ』を観ることになったのですが、原作を知らなかったので、不思議な世界観になじめなかったりよくわからない部分もあったり…。作品への理解が薄かったせいか、「グロテスク」と酷評されたのもなんとなくうなずける部分は多々ありました。
でも。
それ以上に魅せられたシーンが多く、「観て良かった」というのが素直な感想です。(本当はそのあと邦画を観る予定でしたが、余韻を壊したくなかったのでそのまま帰路につきました。そして帰り道に劇団四季の『キャッツ』の公演日程を調べていました)。
多分、識者による酷評は、ミュージカル版との比較や期待値の問題だったのではないかと思います。『キャッツ』初見の私には素敵な作品。もしくは、前評判を知らずに観ていたらそこまで何も思わなかったかもしれませんが、事前情報が酷評しかなかったから好意的な目で観ることができたのかもしれません。(なのでミュージカル版の熱狂的なファンの方は、「こんなのありえない!」となるかも…?)
以下、映画版『キャッツ』について、もう少し詳細に書いていきたいと思います。(何がネタバレになってしまうかわからないので、ネタバレ系が気になる方はご注意ください&ここでやめておいてください)。
映画『キャッツ』概要
『キャッツ』は、イギリスの詩人、T・S・エリオットの『キャッツ~ポッサムおじさんの猫とつき合う方法』を原案としたミュージカル『キャッツ(Cats)』の実写映画。日本では2020年1月24日(金)に全国ロードショーとなりました。
ストーリーについて
舞台は満月の美しいロンドンの夜。街の片隅にあるゴミ捨て場には、様々なジェリクルキャッツたちが年に1度の舞踏会に参加するため集まっています。その夜は長老猫が多くの猫の中から特別な1匹のジェリクルキャッツを選ぶ舞踏会。猫たちは夜通し歌い、踊ります。特別な1匹として選ばれるためにーー。
個人的に一番簡潔でわかりやすかったのはWikiのあらすじです。こちらもどうぞ。
『キャッツ』あらすじ
ミュージカル『キャッツ』との違いは、本来は脇役(?)である白い子猫のヴィクトリアを主人公に、彼女の目線で物語が進むところなんだとか。他にも、猫たちに関する部分がちょこちょこ変わっているようです。
ちなみに、作中によく出てくる「ジェリクルキャッツ」の「ジェリクル」とは、原案者のT・S・エリオットが作ったジュエリーとミラクルを合わせた造語だそう。イギリスでは子ども向けの本などでこのような言葉遊びがよく見られるのだとか。
監督&キャストについて
映画版『キャッツ』の監督は、アカデミー賞の受賞歴をもつ『英国王のスピーチ』『レ・ミゼラブル』などのオスカー監督、トム・フーパー。今回、とにかくこの方が叩かれていた印象が強いです。「人気の『キャッツ』を駄作にしたのは彼」などなど。
そして気になるキャストですが、私が知っていた&見てすぐにわかったのは、中盤から登場するジュディ・デンチとテイラー・スウィフトのみ。あとは皆さん、すごかったけど(見た目が猫過ぎたこともあり、誰か)わかりませんでした…ごめんなさい…。
観ていて猫たちの所作や動きひとつひとつがとにかくしなやかで上品で、特に指先やつま先はバレエっぽかったので、猫のしなやかさをバレエの動きで表現しているのかしら、と思っていたのですが、それもそのはず、後で調べてみたら、主人公の白い子ネコ・ヴィクトリアは英国ロイヤル・バレエ団の現役プリンシパル、準主役的な立ち位置のマンカストラップはニューヨーク・シティ・バレエの元プリンシパルでした。
他にも、俳優というよりは、ダンスや歌のプロが集結した感じのキャスト陣。そういう意味では映像も舞台に劣らず素晴らしかったのではないかと思います。
・ヴィクトリア役のフランチェスカ・ヘイワード→英国ロイヤル・バレエ団の現役プリンシパル。
・マンカストラップ役のロビー・フェアチャイルド→ニューヨーク・シティ・バレエの元プリンシパル。バレエダンサー。
・ミストフェリーズ役のローリー・デヴィッドソン→?
・グリザベラ役のジェニファー・ハドソン→ミュージカル映画『ドリームガールズ 』でアカデミー賞助演女優賞受賞のアメリカの女優&歌手。
・オールドデュトロノミー役のジュディ・デンチ→イギリスの大女優。
・マキャヴィティ役のイドリス・エルバ→『マイティ・ソー』『ワイルド・スピード』『パシフィック・リム』などに出演のイギリスの俳優。
・ボンバルリーナ役のテイラー・スウィフト→言わずもがなの世界の歌姫。
ミュージカルに欠かせない音楽について
『キャッツ』の代表的な楽曲『Memory(メモリー)』。私も知っていたので、『キャッツ』未経験の方でも聴いたことがある、という方は多いのではないかと思います。
劇中では最後の最後までジェニファー・ハドソンの歌唱力が生かされず、なかなか聴き惚れる瞬間がやってこないのですが…最後は鳥肌一歩手前の迫力と魅力がありました(舞台だったらきっと感動して泣いてしまっていたと思います)。
また、映画版で注目の曲は、やはりテイラー・スウィフトとミュージカル界の巨匠、アンドリュー・ロイド=ウェバーが映画版のために書き下ろしたというオリジナルソング『Beautiful Ghosts(ビューティフルゴースト)』ではないでしょうか。
私はヴィクトリア役のフランチェスカ・ヘイワードの歌声がすごく好きだったので、映画の中では一番この曲が好きでした。
映画『キャッツ』個人的な感想
正直、どんなストーリーかまったく知らずに観たので、内容が理解できたのは映画の中盤以降でした…。
そして、ミュージカルではどのようなストーリー展開かはわかりませんが、エンディングの解説は蛇足では?と思ってしまいました。(あれがあって初めてストーリーが成り立つのかもしれないけれど、あの補足的なシーンのせいで間延び感が否めませんでした。私的にはお見送りの感動のシーンで終わりで全然良かった)。
ただ、いわゆるミュージカルの醍醐味、歌って踊ってのパフォーマンスに私は概ね満足したので、ストーリーについてはそこまで何もありません。(シーンによっては意味がわからなくてもそのすごさにグッときて、ぞわっとなったり涙がこみ上げてきたりしました)。
あとで色々と気になって調べたときに、ミュージカルでももともとそこまでストーリー性のあるものではない、とのことだったので、ストーリーに感動するのではなく、パフォーマンスに魅せられる、という私の見方で間違っていなかったようです。
あと、とにかく主人公がとても可愛く、そしてシルエットや所作が本当に美しく、透明感があって、ずっと見てしまう、目で追ってしまう、そんな魅力がありました。そして歌声がまたすごく素敵。声量がある感じではないので、舞台だとまた違った印象だったかもしれませんが、透き通るようなソプラノはうっとり聞き惚れてしまいます。
そうそう、表情が誰かに似ている…とずっと思っていたら、そう、「科捜研のマリコさん」!猫ではないときのお顔はそうでもないですが、ヴィクトリアはどことなく沢口靖子さんに似ている…(と思ったのは私だけでしょうか)。
すごくいい、と思ったシーンはいくつかありましたが、振り返ると一番は中盤の見せ場である、月明かりの下に一同が介し、それぞれがパフォーマンスを見せて盛り上がるシーン。何をやっているのかよくわからなかったけれど、グッときて、こみ上げるものがありました。ミュージカルの場合、舞台の範囲が限られているので、広範囲を使ったこのシーンは、もしかしたら映像ならではの良さが出ていたのかもしれません。
そう考えると気になるのはやはりミュージカル。劇団四季の『キャッツ』にはなんと回転席なるものがあり、それだけはどの公演でもすでに完売になっているんですよね。チケットとって、早く観に行きたいなぁ。
また、一番好きなミュージカル『RENT』と一緒に『CATS』もブロードウェイで観てみたくなりました。(詳しい人の話によると、『RENT』と『CATS』は公演のし過ぎで混んでいないため、予約なし&低額で観れてしまうのだそう。嬉しいような、複雑なような…)。
映画版『キャッツ』、賛否両論あるようですが、にわかミュージカルファンなら楽しめるのではないかと思います。私は映画を通じて「今まで作品に興味がなかった」から「ミュージカルを観てみたい」というところまで関心を持ちました。つまり、駄作と評された映画版にも、『キャッツ』という作品自体の根底にある人を引きつける魅力はあるのではないか、ということです。(ただ、予告を見た子どもが怖くて泣いた、などの話もあるので、私の意見はあくまで参考までに…)。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
ミュージカル同様、映画版『キャッツ』も多くの人に素敵な作品として認知されることを願って。
映画『キャッツ』公式サイトはこちら
https://cats-movie.jp/