先日、三軒茶屋の世田谷パブリックシアターに山田裕貴くん主演の舞台『終わりのない』を観に行ってきました。
山田くんの主演舞台ということで、内容を確認もせず当日を迎えたのですが、向かう途中にあらすじを見てびっくり!ホメロスの『オデュッセイア』を題材とした作品で、さらに私の好きな宇宙が舞台。なんだか私の好きなものがたくさん詰まっている予感…。
山田くんが出ていなければ作品を知ることも観劇する機会もなかったと思うので、観る前から何だか不思議なご縁を感じていました。
舞台『終わりのない』
『終わりのない』は、古代ギリシャの叙事詩・ホメロスの『オデュッセイア』を原典に、劇作家・演出家の前川知大氏が脚本・演出を手掛ける新作のSF作品。
日常と宇宙、古代と未来を舞台に、男子高生・悠理(ユーリ)が魂の旅をしていきます。
「今回は『神々の沈黙』を副読本として、オデュッセウスの冒険を人類の成長の記録に、同時に一人の少年の成長に重ねた。誰もが人生のある時期に、大海原に漂流しているような寄る辺ない不安に襲われたことがあるだろう、そんな心の冒険を思い出していただけたら嬉しい」と前川氏。(パンフレットより抜粋)
出演者は、山田裕貴くん、仲村トオルさん、奈緒さん、イキウメ劇団員ほか。東京、兵庫、新潟、宮崎の4ヵ所で行われます。
舞台を見終わって
観終わった後の感想は…まだ公演が続いているので、そこまで深く書くのは控えようと思いますが…。
SF要素のある現代劇で、量子力学、意識と無意識…などなど、私の大好きな要素がたくさんつまっていて、内容もとてもわかりやすかったです。
題材の『オデュッセイア』は叙事詩の代表例としてよく挙げられていますが、『終わりのない』は、山田くん演じる主人公の高校生・ユーリの成長…というか、心の揺れ…機微などを追う抒情詩的な感じ。あの葛藤や地下熱のような熱さは山田くんに合っているなと思いました。
ただ、テーマが壮大過ぎて、一度では腹落ちさせられなかったので、もう一度観たいな、というのが正直なところ。
そう、本当に受け取るものが多すぎて、そして大きすぎて、解釈が難しいんです。もっとも、何か自分なりの「答えを出す」べきものではないのかもしれませんが…私の性格上、気になってしまって。
脚本・演出の前川知大さんはこの作品を通して何を伝えようとしているのか。山田くんを始めとする演者の皆さんは何を伝えるために板の上に立っていたのか。
それがまだ、自分の中ではうまく言語化できません。もしかしたらある瞬間にふと、「あっ!」とひらめくのかもしれませんが、今はまだふわふわした感覚に支配されている感じです。
作中に出てきた「海に沈んでいく」「宇宙空間に放り出される」というシーンの浮遊感のようなものが残る、不思議な作品でした。
全体を通して音楽もすごく素敵で、あの世界観を表現する効果音などもすごいなあと。特に宇宙船内での音!宇宙っぽい感じがすごく心地よくて好みでした。CDがあったら買いたい!と思ったのですが、やはりさすがになく…(とりあえずパンフレットを購入しておきました)。
それから、田中圭くん主演のドラマ『あなたの番です』で怖すぎる女性役で話題となった奈緒ちゃんも出ていたのですが、細くてすごく小さいのに存在感があって、笑顔とか声とか、とてもかわいかったです。
舞台でもミュージカルでも、生モノは「声」ってけっこう大事な要素ですよね。ユーリの父親役・仲村トオルさんの演技は言わずもがな(演じていらっしゃった役もキャラがたっていて、一番笑いが起きていたのではないかと思います)、ユーリの母親役・村岡希美さんの発声も素敵でした。
作品が投げかけてくる「現代の問題」
そうそう、量子力学のパラレルワールドの概念は、最近よく見聞きすることなのでちょっと気になりましたが、もう1つ、今の私たちへの警鐘ともとれる部分…前面にはそこまで出ていないものの、ストーリーの中核を担っているとも言えそうな「環境問題」のことが印象的でした。
実は以前、仕事で、ある舞台の演者さんたちにインタビューを行ったことがあるのですが、その作品も環境破壊が1つの大きな要素となっていたんです。(舞台はテレビとは違って、そういうテーマにも迫りやすいのでしょうか?)最近の仕事でも来年から始まるレジ袋の有料化について触れていたせいか、環境問題に対する意識付けの念押しをされたような気がしています。
100年後、500年後、1000年後。地球は、人類は、どうなっているのでしょう? 様々なエンタメ作品でよくあるような月や宇宙への進出を果たし、さらなる進化を遂げているのか、それとも。
自分たちの過ちにより、自ら滅んでいくのか…。
未来からの視点で現代を見つめると、いつもとは違うものが見える気がします。そして、人類が目指すべき未来も。
いろいろなことを考えさせられる、素敵な作品と出会えて幸せでした。
ありがとうございました。(さて、2度目の観劇は叶うのでしょうか…!?)
舞台『終わりのない』公式サイトはこちら
https://setagaya-pt.jp/performances/owarinonai20191011.html